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HOME > ESSAY/エッセイ > A15.理不尽な人々 |
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以前クライアントが土地を購入した、とある不動産屋との出来事です。
ある仕事をその不動産屋に頼むべく、前もって見積書をその不動産屋からを取った。
数社との見積り比較の結果、見積の端数(1万円程度)をその不動産屋に値引きしてもらい、最終的な値引き後の見積書を取った。
クライアントの了解を得てその不動産屋に仕事を依頼し、仕事は無事完了した。
しばらくしてクライアントのところにその不動産屋から請求書が届いたが、端数を値引きしていない最初の見積書の金額なので、クライアントから僕に連絡が入った。
僕は単純な事務手続きのミスだと思いその不動産屋に電話を入れた。
「あのう、請求書が届いたんですけど、請求金額が古い見積書の金額が入っているので、請求書を訂正して出し直してもらえますか?」と僕は不動産屋の社長に告げた。
電話の奥で社長と経理担当らしき若い女性の声が聞こえて、あの請求書の件はどうなってるんだ、というような声が聞き取れた。
しばらくしてその若い経理の女性が電話に出た。
「こちらはその請求金額の見積書しかありませんのでその請求書を送りました。」と僕に言った。
僕は「○月×日付の最新の見積書があり、そちらが正しいんですけど・・・」と言った。
「いえ、こちらにはそのような見積書はありません。」
「でも確かに見積書もあり、その金額でお願いしたはずなんですが。なんならその見積書をFAXしましょうか?」と言って僕はすぐに見積書をFAXで送った。
その後すぐに電話を入れて、「その見積書は正しいですよね?」と訊いた。
「ええ、確かにこちらの印鑑も押してあり、この見積書は間違いないと思います。」
僕はホッとした。やれやれ、これで解決だ、と。
だけど僕は思わぬ返事を耳にした。
「でも、もうその金額で請求書を作ってしまって、決済までしてしまったので変更する事はできません。」
「こちらは見積書の金額しか払いませんよ。」
「見積書の金額では請求金額より不足してしまい帳簿上まずいので、永久に請求書を送る事になりますよ。」
「そんな事を言ってもミスはそちらのせいなんだし、こちらが余分にお金を払う義務はないんじゃないですか?」
「そんな事言われても私には判断できません。」
「じゃあ判断のできる社長さんに代わって下さい。」
社長が電話に出た。
「先生、ちょっと細かすぎない?そんな数万円のはした金でごちゃごちゃ言わないで下さいよ。」
「はした金って、たった1万円でもクライアントの大切なお金ですよ!」
社長は切れた。
「何だとてめえ、もう一度言ってみろ!大体お前はいちいちうるさいんだよ!みんな請求書を出さなくても何も言わずお金を払うんだよ!それを請求書を出せだの、金額が違うだの、あんたんとこはどんな会社だ!ごちゃごちゃ言うんだったらてめえ一回事務所に来い!」
「なんで僕がわざわざそちらに出向かなくちゃいけないんですか。来るんだったらそっちが来て下さい。」
「てめえ何様のつもりだ!」(ガチャン!と電話が切れた)
話は途中なのでその後すぐに電話をかけ直したが社長は二度と出なかった。
請求書を出すように言ったのも支払先(振込先)が分からないからであり、見積書と違う請求が来たら連絡を入れるのは当たり前だと思う。
僕は事の経緯をクライアントに説明した。
「不動産屋の社長ってあの怖そうな人ですよね・・・。」とクライアント。
「いえ、僕は一度も直接会ったことがないので分かりません。」(怖い人だったの・・・)
「とりあえずこちらに否はないので連絡を待ちましょう。」とクライアントに伝えた。
僕は念のため専門家に相談し、事の経緯を説明した。
専門家の回答はこうだった。
「そもそも契約というものは契約書を交わす交わさないは抜きにしてお互いの合意の上に成り立つものです。しかも見積書を取り、その金額で仕事を依頼し、請求金額が増額となる正当な理由なしに見積金額より多い金額を払う必要はまったくありません。経理上の理由なんてまったくナンセンスで話になりません。決済後でも未払い金で処理できなんら問題ありません。」
まったくその通りだと僕も思った。(当たり前だ)
クライアントには不動産屋からその後何の連絡もなく、「とりあえず、見積金額だけの金額を支払い先に支払っておきましょう。このままずるずるお金を全額支払わないでいても決して良い結果が得られるとは限りません。向こうが残りの金額を請求してきたら、その時あらためて話し合います。」と僕はクライアントに説明した。
「そうですよね、そうしてみます。たった数万円程度のことなので支払いできないわけじゃないですけど、こちらに落ち度がない上に向こうの理不尽な態度に言いなりになるのは納得できませんよね。」
その後すぐにクライアントは見積書の金額だけを振り込んだ。
もちろんその後もその不動産屋からは何の連絡もなかった。
社長だけならともかく、経理の女性もそんな理不尽なことを言うなんて、いったいどういう事なんだろうと、ぼくはつくづく考え込んでしまった。
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